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キャリア発見記:佐野公俊さん(明星大学大学院 人文学研究科)

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佐野公俊さんは、強迫性障害の治療に役立てるためにACTと呼ばれる心理療法について研究している。2020年6月に行われたキャリアディスカバリーフォーラムで、栃木県のものづくり企業である株式会社アオキシンテックのブースを訪れ、イベント後、社長の鞄持ちを経験した。心理学専攻の学生がものづくりの会社へ。一見専門性が異なる企業に飛び込んだことで何を発見できたのだろうか。

工場のヒューマンエラーを防げるか?
「カウンセリング以外で活用の場が少ない」。佐野さんは、自らが学んだ心理学を社会に役立てる方法を模索していた。そんな中、工場などのヒューマンエラーを心理学の知見で解決できるのではというアイデアを思いつき、キャリアディスカバリーフォーラムにて、株式会社アオキシンテックのブースを訪れた。考えてきたアイデアをきっかけに、社長の青木圭太さんと話が盛り上がり、後日工場見学に参加する約束を取り付けて実際に現地に訪問した。工場見学では、現場の人に工場のことや実際に働いている状況などを教えてもらい、ヒューマンエラーが起きやすい実際の状況などについて理解し、考えを深めるきっかけとなった。

ビジネスをするのは機械でなく、人間だから
今回工場見学以上に佐野さんを興奮させたのは、社長の鞄持ちを経験したことだ。青木さんが社外の人と会う現場に3回同行した。もっとも印象的だったのは、青木さんが商談相手と、まるで友達に話すように新しい仕事のアイデアについて話す姿だった。それは、ビジネス現場に佐野さんが持っていた、ルールだらけのイメージとはかけ離れており、遊び心や個人の繋がりから仕事が生まれることを実感した経験だった。クリエイティブな創造や、円滑なコミュニケーションには性格や特性に働きかけたり心の動きを掴むことが必要であることがわかったのだ。ビジネスを行うのが機械ではなく人間である以上、心理学が活きる場面は多いと佐野さんは確信できた。

専門性を活かすために専門以外の世界も知る
今回の経験から、心理学者は心理学をより活かすために、専門以外の世界も知るべきだと佐野さんは考えるようになった。今後、社会で見えてきた課題に心理学的な知見での解決を目指し、起業も視野に活動してみるという。まだまだ解決策を生み出すまでには社会の理解や現場との議論が必要だ。専門以外の世界での課題の発見が、思いもかけない研究の活かし方のヒントになる、それを実感できる事例と言えるだろう。