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昨年度パネルレポート〜変化の時代を生きる研究者の多様な生存戦略〜

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研究者の新たな活躍の場を発見するキャリアスカバリーフォーラム。2019年度に開催したパネルセッションでの議論を紹介します。

変化の時代を生きる研究者の多様な生存戦略とは?

~研究者として生き残るには、自分なりの足掻き方を見つけること~

研究者が研究者として生き続ける場所を模索して

研究者としてキャリアを続けていくことは狭き門。生き残っていくために、どのような行動や考え方が必要なのだろうか。本セッションでファシリテーターを務めた株式会社リバネスの神藤拓実は、自身が昨年度、高等教育機関のポスドクとしてキャリアデスカバリーフォーラムに参加していた。高校生の研究活動の支援をしながら自身の研究の両方を進めており、この先の自分の居場所が不透明だった。どうすればこのまま教育支援と両立しながら研究者として生き続けられるのかを模索し、今の道を選んだ。研究に集中すべき、民間に進んだら研究をできないのでは、など自分が研究者として葛藤した経験から本セッションを企画した。

自分の研究者としての生存が脅かされた瞬間は?

 セッションでの質問は、「研究者として生存が脅かされた経験とその乗り越え方」である。研究者を続けられるか不安に思った場面はどのように訪れたのだろうか。早稲田大学で教授を務めながら化学の情報発信サイト「ケムステーション」を運営する山口さんは、ポストを得た直後の経験を挙げた。博士課程は順調に良い結果が出せたのに、自分のポストを得て、新しい研究テーマを始めたら、全然結果が出なかったという。自分がそれまで先生に頼りながら研究を進めてきたことを痛感した山口さんは、他の若手研究者の論文を徹底的に分析した結果、「ホームランを狙う研究のやり方」を改めることで生存の危機を抜け出した。「優秀な若手研究者は、わかっていることが1つもない研究ではなく、過去の研究からパラメーターを1つだけ変えたりしながら地道にわかることを見つけている。やり方を変えると、結果がでるようになり、結果的にやりたいことに持っていくことができました」。

独り立ちするときのプレッシャーの中、自分なりのやり方を見いだせるか

 株式会社リバネスの高橋の場合は、同じ研究室で助手として採用された初日に感じた危機感を挙げた。「以前と変わらない環境だったが、締め切りに追われていた博士論文がない状況で毎日がすぎていくと考えると、自分にとって、博士論文が目標になっていたことがわかった。このまま次の研究の目標を掲げて行かなければ、緩慢なまま研究を続け、いずれはポストがなくなっていくと思った」という。当時、リバネスの創業にも参加しており、起業一本でがんばる仲間たちが刺激になって、自身を奮い立たせたという。研究者として独り立ちする過程でのプレッシャーのかかる状況で、自分なりの答えややり方を得て乗り越えることが研究者の生存には必要なようだ。

研究に集中するか、あえて二足のわらじを履くのか

 登壇した4人は研究者であり、経営者、教育者などの顔も持つ。研究に集中しないと成功しないと言われる中で研究者としての生き方をどのように捉えてきたのだろうか。「ケムステが無ければ何十報か多く論文を出せていたかもしれません。でも、ケムステを通じて研究だけではありえなかった出会いもありました。今後広告料として研究費を獲得し、好きな研究を続けていけるような、伝えることで稼げる研究者を目指しています」という山口さん。セルファイバの柳沢さんは、自分にしかできないことを追求し、研究から事業化を目指していくベンチャーの仕事に魅力を感じた。場所はそれぞれ異なるが、二足のわらじの苦労は織り込み済みで覚悟を決めて選んだ人が多い。企業研究者からアカデミアへ戻った東京工業大学の中村先生の最後の言葉が重要なヒントになった。「1つの専門に没頭して掘り下げた人と見比べると、叶わないと思うことがありました。それでも自分のキャリアを否定せず、足掻くことが大事だと思います。違う道を歩んだからこそ生存できる場合もあリます。うまく行かなかったことを失敗とせず、自分には自分のやり方があるのだと一生懸命あがいてみて欲しいですね」。

incu-be47号(2019年12月号)に掲載。

<2020年度キャリアデイスカバリーフォーラム>
2020年6月20日(土)10:00-18:00 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター5F
詳細・申し込みフォーム https://cdf.lne.st/

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