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フォーラム参加からインターンへ!:株式会社アグロデザイン・スタジオ

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西ケ谷有輝氏(株式会社アグロデザイン・スタジオ 代表取締役社長)
出野泉花氏(慶應義塾大学)

1dayや短期間のインターンシップを辞め、ジョブ型のインターンシップを実施する際にもっとも担当者の頭を悩ませるのが、どんな仕事を経験してもらうかを設計する点ではないだろうか。標的酵素に特異的に結合する農薬候補化合物のデザインで、安全な農薬開発を目指すベンチャー企業、株式会社アグロデザイン・スタジオでは、少人数ながらジョブ型インターンシップを実施している。どのようにインターンシップとして学びと即戦力の両立を実現させているのだろうか。

後々試行錯誤しておきたい案件を任せる
設立2年にして、すでに複数人のインターン生を受け入れてきた同社代表取締役社長の西ケ谷有輝氏は、インターンの課題についてこう考える。「インターン生に知的財産の絡む案件を任せることは難しいと考えています。自分の研究もある若手研究者は毎日通うこともできないため、今優先順位の高い仕事も難しい。そこが研究型のインターンの難しいところで、弊社でも多くの人数を受け入れることはできません」。西ケ谷氏が渡しているのは直近の優先順位は下がるが、1年後など先を見据えて試行錯誤しておきたい調査や研究の案件だ。ベンチャー企業には補助金や研究費の活動などで調査や条件検討を行いたい仕事が多数ある。社員は今手を回せないが、取り組んでくれていれば後々助かるし、たとえ少し失敗しても十分リカバーできる期間があるので、インターン生にも試行錯誤してもらうことができるという。

必要なのは丁寧な教育ではなく、相談できる距離感
2020年の1月から同社にインターンとして通う慶應義塾大学の4年生の出野泉花氏は、今、微生物の培養条件の検討を進めている。高校生の時から研究をしており、学部生だがすでに論文を書いた経験と十分な研究経験があり、受け入れを決めた。「教育する余裕はないので、自分で仕事をとりに行ったり、考えて動ける人が必要だと思います。出野さんの論文を見て大丈夫だろうと思いました」。
自社技術の事業化に向けて社員が日々奔走する戦場のようなベンチャー企業をインターン生側はどう感じたのだろうか。「社員さんには相談すればアドバイスをいただけますし、困った、という事はありません。社会人の基礎みたいなところは本を一冊渡してもらって実地で注意を受けながら勉強しました。アカデミアの研究とのギャップを見たかったのですが、私が関わっている新しい研究の種を探すところでは共通点があるなと思いました。データを眺めておもしろい!と考えている時間はないのですが」。大学での研究経験を活かせるテーマを渡せば、手取り足取りの教育がなくとも、インターン生がその中で学べることや感じることはありそうだ。

仕事の見極めによって優秀な人材の誘引力に
「教育する余裕がない現場に負担になる」、「秘密保持や知財の取り扱いが難しい」というのはインターンシップの検討でよく挙がる課題感だが、同社の事例はこうした課題があった上で、学びと即戦力を両立させることができている好例と言える。社内に入り込んで実施するジョブ型インターンの実施は多数を受け入れることは難しく、その能力やコミュニケーション力には見極めが重要になってくるため、受け入れの明確な条件検討も必要となるだろう。しかし、研究開発の一端を担ってもらう形であれば、専門性を持った研究者に手取り足取りの教育は不要であり、お客様的な体験活動より、企業の文化や仕事の仕方、スピード感を体感してもらうことができ、より優秀な層を集めるきっかけとなるだろう。